リアル店舗経営から学ぶ、売れ続ける仕組み
私の実家は商店(酒屋と本屋)を経営していた(現在、両親は引退)のですが、開店して数年後、目の前に同業では最大手のチェーン店がオープンしました。
最初こそ、お客さまの流れは変わり、売上に影響しましたが、そんなことも数か月のこと。あれから何十年もたっていますが、今でも、共存(?)の関係で両方のお店共に営業をしています。
なぜ、吹けば飛ぶような(失礼!)個人商店が、目の前の超大手チェーン店に負けていないのか。まとめます。
概要
お店のことを思い出すと、いろいろネタがあるのですが、一言で表現すると、個人だからこその機動力と現場主義。が良かったんじゃないかな?と思います。
それを父に言うと、当時は他にもやらなければいけないことも有り、目の前の超大手チェーン店の事ばかり気にしてられなかった。と話すんですけどね。
そこで、いくつかの出来事から選抜して、
- 「好きな人はたまらないよね」という“専門性”。
- 「何これ面白い!」と思っちゃう“独自性”。
- 「ちょっと高いけど他には無いからイイかな」と買っちゃう“差別化”。
- そして、それらを可能にした“仕入れ”。
これら4つを、ひとつひとつ、深めていきます。
ちなみに、前にも書いた「【売り方】安定のハンドメイド販売にするリスクマネジメント」にある、
「何であのお店はつぶれないの?」は、うちのお店でもやっていることす。
表には見えずらい取引先があるんですよ。
近所の子供関係の施設に商品を卸してました。
普通に歩いて持って行っていたので、エプロンもしてるから納品してたらわかるんですけれどね。
意識してないとわからないので、『見えずらい』お取引となるんです。種は明かせば、案外「なーんだ。」ですよね。
専門性
「好きな人はたまらないよね」という“専門性”

今回は、本屋の話で父のネタです。
本屋って、取引のある“取次”から(要は問屋)から店に本がゴソッと送られてくるんですが、注文を出した本以外にも、色んな種類の本も一緒に送られてくるんです。で、いらない本は、チェックして返品。と言う作業になるんですが、店の傾向に合わせた本が送られてくるか?と言うと、必ずしもでは無いんです。
なので、欲しい本は“取次”に直接、買いに行った方が早いので行っちゃうんですね。(今はできなくなりました。)
私も夏休みなどの長期休暇になると、荷物持ちとしてよく“取次”に同行しました。ある時、父と一緒に行ったことがあったんです。父の担当は小説(文庫)。父が仕入れてきた文庫を並べると、その日からの売上がグググ ーーーーー ッと伸びるんですよ。
時代物が多かったんですが、かなりコアなチョイスだからか、好きな人は好きなんですね。あっという間に、棚に隙間ができ始め、気が付くとゴソッと空きがあり、補充に追われます。
父が頻繁に行ければいいんですが、経営者なので時間のやりくりは簡単ではありません。父に仕入れる本を聞いて行くのですが、本人が選ぶ時ほどの売上にはならないんです。やはり、予定外のチョイスがコアな人の目に留まるんですね。
それはやはり、専門的に。じゃないとわからない、深い部分がポイントになってきます。
個人の強みは、個人の好みが偏っていることが面白み。可もなく不可もないことは、大手がやればいいこと。大手が広く浅くなら、個人は狭く深く。専門性が求められています。
あなたが本当に語りたいこと。伝えたいこと。こだわりたいこと。は、恥ずかしいことではなく、隠すことでもありません。表に出し、そういうところが好き。そういうのを探していた。と喜ばれる要素です。
専門性をオープンにしましょう。
ただし、専門用語ではなく、端折るのではなく、分かりやすい言葉で伝わりやすい言語にしてくださいね。
父がお客さまに時代小説の説明をする時、傍ら(品出ししながら)で聞いている私でも理解ができる内容でした。読んでみようと思ったか?と言うと、もともと歴史ものには興味が無いので読みませんでしたが(笑)、歴史物が好きなお客さまにとっては、父の説明で興味が沸いたようで、「読んだことが無い作家だけど読んでみる。」と購入され、その後も同じ作家さんの作品を購入されていました。(たまたまレジにいた私)
独自性
「何これ面白い!」と思っちゃう“独自性”

今回は、店長のネタです。
うちの店には、マーチャンと呼ばれる名物店長が居ました。(今でも居ますが、もっと偉くなりました。)彼が居るから、父は安心して現場を任せ経営の方に移行でき、また、現場主義が成立したのもあります。
まぁ、とにかく、一言で表現するとユニークで、目の付け所が他とは違うんですよ。
それがわかるのは品揃えです。お客さまが口を揃えて言うのは、「他の店では絶対に見ない、面白い物がある。」と言うのが、うちの店の特徴です。それは、アルバイトに入って来るスタッフからも度々出ることで、「小さい頃から不思議な物が売ってる店で仕事がしたい。」んだそうです。
面白い物って、うちは食料品店ですから食品なんですが、一般的な物と並んで、ユニークなネーミングだったり、珍しいお酒だったり、ディスカウント品だったり、珍味とかではないんだけど、見ていると楽しい物が並んでいます。(もちろんおいしい)そして、それは必ずまたあるとは限らない物でもあります。
そこがお客さまにとって、うちの店に来て買い物をする、一つの特徴でもあります。
超大手チェーン店で用を済ませて(買い物とは限らない)、次にフラッと寄って、面白い物を買って帰る。そんなルートをたどる方もいらっしゃいます。
マーチャン店長は、仕入れに行っては、変な物(失礼!)を仕入れてきて、店に置いて、お客さまの反応を見て、感想を聞いて、嬉しそうなんですよ。楽しんでやっているんです。
そしてそれを経営者である父は何も言いません。
仕入れてきてもダメにしてしまっていたら、注意はあったでしょうが、マーチャン店長のお客さまの把握はシッカリしています。うちのお店で売れる変な物(失礼!)を仕入れる嗅覚があるんです。
私も仕入れに付いて行ったことが何度もありますが、ユニークな物を見つけても、なかなかお目に叶わないんですよ。彼の中に、YesとNoの基準が有るんですよね。 自分だから出来る事。得意な事を、楽しんでやる。独自性は、お客さまが喜ぶことを、自信を持って突き進むことがポイントです。
差別化
「ちょっと高いけど他には無いからイイかな」と買っちゃう“差別化”

今回は、母のネタ。
食料品店とはいえ、少なからず雑貨も扱っていました。小さい頃の私の品出し担当部署でもあります。日用雑貨って小さいので、商品と商品の隙間が狭く、子供の手の方が品出しがしやすい…。と言われてましたが、実は、物が小さくて多いから大変。時間もかかるし、品出しをさせておけば遊び相手をしなくて済む時間を長時間作れる。という真実を大人になって聞きました。
さて、そんな日用雑貨。困った時に必要な下着なんかも置いてあります。急な出張やお泊り用ね。普通、白やグレーが多いのですが、うちのお店のレパートリーはカラフルでした。そして、柄物が多い。それもストライプやチェックではなく、和柄、可愛いゾウさんプリント、エキセントリックな柄。などなど、かなり変わっていたんです。これがけっこう売れるんですよ。
シンプルでオーソドックスなお品に比べて、高額にもかかわらず、仕入れに行くと補充用を必ず買いました。
仕入れに行って選んでいるのは母で、この人、娘の私が言うのもなんですが、センス良いんですよ。「他と同じ物を置いてもつまらない。」と言って、ちょっと変わった、あまり見ない、インパクトは強いけれど趣味は悪くない。そんな柄を展開しているブランドを見つけて、そこの商品を置くようにしたんです。
そうしたら、売れるんですよ。
いくら急に必要になったとはいえ、無地の白やグレーは、いかにもで嫌。チェックやストライプにするかぁ。って思う層に、いつものよりちょっと違う感じで、でもセンスは悪くない。そんなプリントの下着はドンピシャなんですね。
これは、超大手チェーン店には絶対できません。なぜなら、既定のモノ以外の商品を置くことは、基本、できないからです。
同業他社(者)と同じことをしても、意味は有りません。自分たちだから出来る事をする。差別化においては、他を見て自分を知る事が大事です。
仕入れ
「時間をかけて、足で稼ぐ」“仕入れ”

個人商店である、うちの店が、目の前の最大手チェーン店に負けることなく、共存の関係で、現在でも経営できているのは、マーケティングの基本でもある、『専門性・独自性・差別化』をしっかりやっているから。と言うのが、大人になった私がわかる簡単な分析結果です。(子供の頃は「うちの店って変わった物が置いてあるんだよねー」くらいの感覚でした)
それができるのって、“仕入れ”のおかげです。
『専門性・独自性・差別化』それぞれで“仕入れ”について、書いていますが、仕入れができる問屋を探すのも、最初は大変でしたし、見つけても、仕入れができるようになるまで時間がかかりました。(当時は今以上に、問屋は閉鎖的でした。)
「あの時の出来事は問屋の許可のためだったのね」って記憶がいくつかあります。
仕入れ先を探すのは、手間も時間もかかります。そして、仕入れ先を見つけた後も、その仕入れ先で、自分に合ったものを探すのには、自分の目で確かめるのが一番なので、時間も手間もかかります。
ですが、だからこそ、簡単に知られたくない事でもあり、付加価値にもなりうることです。
うちの店を棚に上げて言うのもなんですが、上手くいっているお店って、仕入れに力を入れています。
探すのは難しいですし、スグに情報が入ってくるわけでもありませんが、情報は得ようと思わなければ入ってきませんので、アンテナを張ること。そして今はネットがありますから、自分でネットで探すことを、コツコツと続けてください。
そして気になったら、問い合わせることも忘れずに。
仕入れは大事。